「ねぇ、ルディーン。菓子は作んないの?」
アマンダさんもそれがどんなのか知りたかったからなのか、さっきからお菓子を作る道具の事ばっかり話してたでしょ?
だから僕たちのお話を聞いてたキャリーナ姉ちゃんが頭をこてんって倒しながら、お菓子は作らないの? って聞いてきたんだよね。
「ああ、そう言えば、今日はスポンジケーキから発生するお菓子を教えてもらうためにルディーン君に来てもらったんだっけ」
「そうだよ。美味しいお菓子、いっぱい食べられると思ったのに!」
キャリーナ姉ちゃんは自分でお菓子を作んないから、道具のお話を聞いても全然面白くないんだよね。
だからお菓子を作るための魔道具のお話はもやめて、お菓子作りに入って欲しいみたいなんだ。
でもね、
「そうね、私も前にミラが作ってもらった、プリンの何とかってのとかを食べたいなぁ」
レーア姉ちゃんがこんな事言い出してもんだから、またお菓子を作るのが遅くなっちゃったんだよね。
「レーア姉ちゃん、それ何? プリンとは違うの?」
「えっとね、プリンはプリンなんだけど、ミラがルディーンに作ってもらったのは器の中に他にもいっぱい載っかっててすっごく豪華だったんだよ」
そう言えばレーア姉ちゃんのお友達のミラさんがプリンを食べたいって言った時に、どうせだったらちょっと違ったのを作ってあげたいって思ったんだっけ。
だから普通のプリンじゃなくってプリン・アラ・モードを作ってあげたんだっけ。
でもさ、あれってプリンとは違うお菓子なのかなぁ?
僕は一人でどっちだろうって考えてたんだけど、そしたらキャリーナ姉ちゃんが急に僕を揺さぶってきたんだ。
「わっ! キャリーナ姉ちゃん、急にゆすったら危ないよ」
「だってプリン何とかって何って聞いても、ルディーンが無視するんだもん」
あれ? キャリーナ姉ちゃんになんか聞かれたっけ?
そう思った僕は、そうなの? ってレーア姉ちゃんの方を見たんだよ。
そしたらさ、さっきからキャリーナ姉ちゃんが何度も聞いてたよって。
「ルディーンが何かを考えてる時は、ゆすったりしないと気付いてもらえないのよねぇ」
「そうなの?」
レーア姉ちゃんが言うにはね、僕は考え事をしてると周りの音が聞こえなくなっちゃうんだって。
だからさっきからキャリーナ姉ちゃんが聞いてたのに、全部無視してたんだよって教えてくれたんだ。
「そっか。ごめんね、キャリーナ姉ちゃん」
「うん、いいよ。それで、ミラお姉さんに作ってあげたプリン何とかって何なの?」
「プリンと一緒にいろんな果物とか生クリームなんかをのっけたやつでね、プリンアラモードってお名前なんだよ」
ホントは絵をかいてあげた方がよく解るんだろうけど、僕、へたっぴでしょ?
だからお口でどんなのかを、キャリーナ姉ちゃんに一生懸命お話してあげたんだよ。
そしたらさ、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが、私もそれが食べたいって言い出したんだ。
「そんなおいしそうなの、私も食べてみたい」
「えー、でもでも、今日はアマンダさんにケーキの作り方を教えてあげるってお約束しちゃってるからダメだよ」
これがね、イーノックカウの僕んちやグランリルのお家にいる時だったらいいんだよ。
でも今日はアマンダさんに、デコレーションケーキの作り方を教えてねって言われてここに来てるんだもん。
だから僕、キャリーナ姉ちゃんに今日はダメって言ったんだ。
でもね、そしたらアマンダさんがちょっと待ってって言うんだよ。
「ルディーン君、別に断る必要はないんじゃないかしら?」
「え〜、なんで? だってケーキ作ってたら、プリンアラモードなんて作れないよ」
プリンアラモードって、プリンを作るだけじゃなくって果物を熟成させてからきれいに飾れる形に切ったり、生クリームをちょっと硬めに泡立てたりしないとダメでしょ?
まだ土台になるスポンジケーキも焼いてないんだから、これからデコレーションケーキを作ろうと思ったらプリンアラモードなんて作ってる時間は無いもん。
だから僕、アマンダさんに作れないよって言ったんだけど、そしたらさ、
「なら今日はケーキを作るのをあきらめて、プリンアラモードっていうのを作りましょうよ」
なんて言われちゃったんだ。
「僕、すっごいケーキを作るつもりだったのに」
「ごめんね。私としてはもう作り方を知ってるスポンジケーキを使ったものよりも、未知のお菓子であるプリンが気になって仕方が無いのよ」
デコレーションケーキはスポンジケーキを土台にしてる来るお菓子でしょ?
それにその上に塗る生クリーもさっき作り方を教えちゃったもんだから、アマンダさん一人でもデコレーションケーキっぽい物はもう作れるんだよね。
だからさ、そんなのより名前しか知らないプリンがどんなお菓子なのか、アマンダさんは気になってしょうがないんだって。
「それにルディーン君のお姉さんがあんなに食べたがっているもの。幸い生クリームも果物もそろっているんだから、そのぷりんあらなんとかっていうのを作りましょうね」
「しかたないなぁ」
キャリーナ姉ちゃんの方を見るとね、お母さんに向かってプリン何とかが食べられるって嬉しそうにお話してるんだよ。
それを見たら僕、流石にすっごいケーキのほうが作りたいなんて言えないもん。
だから諦めてプリンアラモードを作る事にしたんだ。
「でも、アマンダさん。そんなにすごいお菓子じゃないよ。だってプリンはお母さんやレーア姉ちゃんでも作れるもん」
「そうなの? でも、簡単に作れるものだからすごくないというのは違うんじゃないかな」」
アマンダさんは何かすっごく期待してるみたいだけど、プリンは作り方さえちゃんと知ってたら誰でも作れるお菓子なんだよね。
だからそんなにすごいお菓子じゃないよって言ったんだけど、アマンダさんはそれは違うよって言うんだ。
「例えばルディーン君が教えてくれたパンケーキだけど、あれも作り方さえ知っていれば誰でも作れるわよね?」
「うん。お母さんも僕んちで作ってるよ」
「でも、その作り方を知らなかった私たちからすると、あれほど作り方を知って驚かされたお菓子はないのよ」
アマンダさんはね、お掃除に使う粉でお菓子が作れるなんて全然思ってなかったんだって。
だからベーキングパウダーもどきの使い方を初めて聞いた時は、まさかそんなものを使うなんてってすっごくびっくりしたんだってさ。
「食器を洗ったりするのにも使うから、口に入れても害は無いって解ってたわよ。でもそれを食べ物に入れるなんて普通は思わないもの。あのパンケーキの存在を知っていたら、作り方が簡単なものはすごいお菓子じゃないなんてとても言えないわよ」
「そっか。じゃあ、もしかしたらプリンもすっごいお菓子なのかなぁ?」
そう言えばミラさん、プリンアラモードを食べて大喜びしてたっけ。
それにキャリーナ姉ちゃんもさっき、僕の作ったお菓子の中でプリンとアイスクリームが一番好きって言ってたよね。
「まぁすごいかどうかはともかく、少なくとも好きだっていう人がいるのなら、それは間違いなくおいしいお菓子のはずでしょ。なら作って食べてみたいと思うのは、お菓子職人なら当たり前でしょ。それにさっき、ルディーン君も言ってたじゃない」
「僕、プリンの事、なんか言ったっけ?」
最初は作る気なかったから、プリンの事はまだ何にも言ってないよね?
だからアマンダさんが何を言ってるのか解んなくって、頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、そんな僕にこう言ったんだ。
「最初にわたしの知らないお菓子にはどんなものがあるの? って聞いた時、こう言ったじゃない。その時食べたいと思ったものを作って来たって」
アマンダさんはね、僕が作って食べたいって思うくらいなんだから、そのぷりんってお菓子は間違いなくおいしいはずよって笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
お菓子って、決められたレシピ(分量)を守るのが大事って言いますよね。
あれって、それさえ守れば間違いなく一定以上の味にはなるっていう事でもあるんですよ。
ですから、そのおいしいものを誰でも作れるレシピを見つけ出すというのは、それだけで十分すごい事なんだよって言うお話でした。